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川はゆく

写真家にとって広島をテーマにすることは「ヒロシマ」を表現することと切り離せない。土門拳は『ヒロシマ』(1958)で被爆者を通してその非人道性をあぶり出し、石黒健治は『広島』(1970)で高度経済成長下で風化する記憶を淡々と描写し、76年に撮り始めた土田ヒロミのヒロシマ三部作は年月をかけた記録写真で、石内都の『ひろしま』(2008)は静かに美しく被爆遺品をとらえた亡き人のポートレート。

そして戦後70年が過ぎた現在の広島を撮り下ろした写真家・藤岡亜弥さんの『川はゆく』(2017)。マツダスタジアムを埋め尽くすカープファン、賑やかなフラワーフェステバル、路面電車、本通り商店街、基町アパート、テレビに映った大統領当選のニュース、燃えるような夕焼け。広島にいるとなかなか気づかないけれど、どの風景もヒロシマ。市内を流れる川の流れのように、この瞬間も絶えず時代とともに街も人も流れている。
広島生まれの藤岡さんが向き合い生まれたこの写真集は数年後、どのような意味を投げかけてくるのでしょうか。

『川はゆく』¥5,000+税

2018-05-09 | Posted in BOOKSComments Closed