EXHIBITION & EVENT

LOCKET 5号刊行フェア

旅を通して主観的な真実を追いかける独立系旅雑誌『LOCKET』(ロケット)。企画・取材・執筆・撮影・編集・流通を個人で一貫して行なう、気骨のあるインディペンデントマガジンです。今回は、先日発売された最新号のフェアを開催します。

5号のタイトルは「野性の造形」。クマをかたどった造形物を追いかけ、2021年にトルコ、ドイツ、北海道、特集外では西表島でも撮り下ろし取材を敢行しました。古代遺跡の彫像、都市名がクマに由来する街、木彫り熊の再ブームを牽引する現役作家。さらに石川直樹氏、津田 直氏、高野夕輝氏、安藤夏樹氏、在本彌生氏、寺尾紗穂氏といった面々が誌面を彩ります。

完売しているバックナンバーやオリジナルプリントを販売するほか、制作の裏側を伝えるラフや校正紙を掲出。初のオリジナルグッズとして本誌にも掲載の被写体から生まれた、グラフィックデザイナー・YUNOSUKEさんのイラストTシャツも販売します。

以下、『LOCKET』の内田洋介さんから熱いステイトメントも届きました。ぜひご一読ください。初日は内田さんも在廊してくれます。

「広島にいるたったひとりの読者へ」

「たったひとりの読者を想って本をつくれ」とは、出版業界におけるクリシェである。『LOCKET』という独立系旅雑誌を編むぼくの頭にはそれがつねにふたりいて、ひとりじゃないあたり、だから30歳にもなって半人前なんだと思い知らされる。
ふたりのうちのひとりは広島にいる。いや、広島にいるかもしれない、といったほうが正確だろう。ブータンを旅して創刊号を放った23歳の春、相生橋にほど近い古ビルの2階で出会った。埼玉の実家で200冊近い雑誌をバックパックに詰め、すべてがなくなるまで西を目指した行商の途上。書店の前で重い荷物を降ろし、新手の押し売りのごとく雑誌を店主に手渡す姿を見かねてか、ひとりの男性客が目の前で買い上げてくれたのだ。それは赤の他人が現実の読者に変換された初めての瞬間だった。
節目とするなら第10号が妥当だろうが、このペースだとそのころにはアラフォーになってしまう。だからせめてキリのいい第5号で立ち止まる機会を持つことにし、それなら場所は「READAN DEAT」しか考えられなかった。最初の読者が雑誌ではなく店主の清政光博さんを信頼して買ってくれたことくらい、いまとなっては容易に想像がつくからだ。
本展では第5号「野性の造形」特集を発売した記念に、初めてのオリジナルグッズや版元完売している全バックナンバーを販売し、制作段階のラフや校正紙を展示する。いまこれを読んでいるキミがもしあの日の彼なら、創刊号の感謝を伝えたい。あの一冊がなければ、延べ7,000冊も刷りつづけることはできなかった。キミがもしそうでないなら、いまこの瞬間からでも、読者のひとりに加わってもらいたい。たったひとりの読者がくれる勇気の大きさは、この雑誌の最新号が物語っているはずだから。

LOCKET 5号刊行フェア
会期:6/11(水)〜26(日)

2022-06-09 | Posted in EXHIBITION & EVENTComments Closed