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長戸裕夢さんの北川毛窯

昨年秋にトークイベントで松山に呼んでもらった翌日、連れて行ってもらった今治の古道具店で店の奥にあった徳利を眺めていたら、「砥部焼の古い物かもしれないんだけど」と出してもらった物が、灰色がかったモスグリーンの一升徳利でした。砥部焼といえば、唐草模様の染付の、おおらかな厚手の磁器というイメージがパッと思い浮かぶ程度のことしか知らなかったので、「こんな渋い雰囲気の物も作られていたんだ」と印象に残りました。

それからしばらくした後、大型書店で陶芸専門誌を立ち読みしていたら、愛媛の作家さんが紹介されていて、気になって検索してみると、どこかで聞いたことがあるワードが挙がってきました。「北川毛窯」。それは、古道具店で教えてもらった江戸時代後期に稼働していた砥部の古窯。その人は砥部の窯の四代目で、かつての陶工に思いを馳せながら、砥部焼の最初期である北川毛窯の焼き物を再現し、自身の作品に活かそうとしていました。

偶然の出会いから始まった個人的胸熱エピソードも添えましたが、先日からお取り扱いが始まった、長戸裕夢さんの器をご紹介します。砥部焼のルーツは、唐津辺りから招いた日本人陶工に技術を学んだのが始まりという説が主流のようですが、朝鮮から渡来した陶工が始めた説もあったりとミステリアス。北川毛窯についての文献も少ないようです。長戸さんは窯跡に残された陶片や資料を元に器作りに取り組んでいます。

砥部焼のイメージを180度ひっくり返すような、堅く焼き締まった薄手の陶磁器。刷毛目や象嵌、白磁の器は、「中四国でも李朝を思わせる焼き物があったんだ」と、勝手に同じ地域枠でシンパシーを感じて嬉しくなってしまいます。

長戸さんは原料となる磁土も業者から購入するのでなく、収集した陶石を砕いて用意したり、現在は薪窯をセルフビルド中とのことで、自然体のストイックさにも感銘を受けています。これからもとても楽しみな作家さんです。

2022-04-29 | Posted in TABLEWAREComments Closed 

 

山﨑泰治『In the Light』刊行記念展

「光」を受け止めることのできる対象を探し、たどり着いた人の肖像。その舞台の上を巡る自然の光は、操る隙など全くなく、強く堂々と溢れ続ける。環境に身を任せ、“ 終わらない何か ” に出会った瞬間にシャッターを切る。これらの作品はポートレイトではなく、風景に近いのかもしれない。─山﨑泰治

広告写真を中心に活躍する、写真家・山﨑泰治さんの初写真集『In the Light』の刊行記念展を開催いたします。

作家にとって、光を表現できる被写体は人物の表情のクローズアップでした。撮影のために作られたライティングではなく、刻一刻と変化し、流れていく自然の光を丁寧に捉えたその写真は、繊細な描写による柔らかな階調と、確かに感じられる存在の重さを併せ持つ豊かな表現へと昇華されています。

フィルム写真で捉えた柔らかな光を、写真集と共にお楽しみください。

山﨑泰治
1978年長野県生まれ。写真専門学校、スタジオ勤務を経て2004年上田義彦氏に師事。2008年独立。写真作家として数々の個展、企画展にて作品を発表。多摩美術大学非常勤講師。

会期:4/29(祝)〜5/15(日) 初日作家在廊

2022-04-28 | Posted in EXHIBITION & EVENTComments Closed 

 

製本講座 -和綴じ本-

自分の手で作品集を製作してみたいというアーティストの方や、製本の知識と技術を身につけたいという方に向けた、手製本の講座を開講します。

今回は和綴じ本(A5サイズ)を、2回に分けて製作します。およそ180度開くハードカバーが特徴です。

講師は、社会問題に纏わる歴史や記憶を主なテーマとして制作に取り組み、手製本による写真集がニューヨーク近代美術館の図書館にも収蔵されている、広島出身の写真家・藤井ヨシカツさん。手製本を媒体とした表現で国内外から評価される藤井さんに、本作りの基礎を学びます。

藤井ヨシカツ Yoshikatsu Fujii
広島県出身。東京造形大学で映像を学んだのち、2006年より写真制作を開始。社会問題に纏わる歴史や記憶を主なテーマとして制作に取り組み、作品はアメリカ、ヨーロッパをはじめ国内外で展示された。離婚した両親と自身との関係をテーマにした作品「Red String」は、2014年に少部数限定の手製本による写真集として発表された。同書はパリフォト・アパチャー財団写真集賞などにノミネートされたほか、米タイム誌をはじめとする2014年のベスト写真集の一冊に選出されるなど注目を集めた。2015年以降は故郷の広島に拠点を移し、長期的な調査プロジェクト「ヒロシマ・グラフ」の制作に取り組んでいる。このプロジェクトは広島に生まれた被曝3世としての視点から、誰も知ることのなかった歴史の証言や広島に生きてきた人々の軌跡、風化していく戦争の爪痕にあらためて眼を向け、後世へと伝えていく取り組みである。写真集「Red String」「Hiroshima Graph – Rabbits abandon their children」はともにニューヨーク近代美術館(MoMA)図書館に収蔵されている。
https://www.yoshikatsufujii.com/

日程:第1回 _ 5/20(金)、第2回 _ 5/27(金)
時間:各回 19:00 〜21:00
定員:6名
場所:READAN DEAT
料金:合計 11,000円(材料費込)

【用意していただくもの】
カッター、カッター替刃、カッターマット(A3サイズ)、定規(30cm以上)、筆記用具、おてふき用のタオルまたはウェットティッシュ

※定員となりましたので受付終了とさせていただきます。

2022-04-15 | Posted in EXHIBITION & EVENTComments Closed 

 

古武家賢太郎 個展 「TOUCH HAS A MEMORY」

広島出身のアーティスト 古武家賢太郎さんの個展を開催します。
新作は記憶を辿りながら形となったカラフルな幾何学模様がたくさん登場します。

桜の木のレイヤーに色鉛筆で描かれた形や色が何を表し問いかけているのか、幻想的な色使いのなかで表現された作品が集います。昨年出版された作品集『KENTARO KOBUKE』もどうぞご覧ください。

KENTARO KOBUKE 「TOUCH HAS A MEMORY」
4/2(土)〜4/17(日)

古武家賢太郎
広島県生まれ
1998年 桑沢デザイン研究所卒業
2009年ロンドン芸術大学 チェルシー・カレッジ・オブ・アーツ 修士課程修了
2012年に文化庁進芸術家海外研修制度研修員に選出

http://www.kobuke.com/

KENTARO KOBUKE 「TOUCH HAS A MEMORY」
4/2(土)〜4/17(日)

2022-04-01 | Posted in EXHIBITION & EVENTComments Closed 

 

3/26(土)小原真史トークイベント「人間の展示 -資料で読み解く人類館-」

万博、と言えば、太陽の塔がシンボリックな1970年の大阪万博を連想する方も多いと思いますが、第一回のロンドン万博は1851年にまで遡ります。

当初は世界各国が新しい産業技術の成果を競い合う側面が強かったのですが、やがて植民地拡大を目指す帝国主義国の、国威アピールの場と変容していきます。

日本で行われた内国勧業博覧会もその流れを汲み、1903年の第五回内国勧業博覧会では植民地・台湾のパビリオンが建設されました。さらに、民間の施設として「人間」を展示する「学術人類館」と呼ばれる施設も登場しました。

今回、インディペンデント・キュレーターの小原真史さんが、長年リサーチを重ねてきた学術人類館について、貴重な資料と共にお話してくださいます。当時、植民地や異文化に対してどのような眼差しが向けられていたのかを探ります。

小原真史 (こはら・まさし)
キュレーター・映像作家。1978年愛知県生まれ。監督作品に『カメラになった男 写真家中平卓馬』(2003)がある。2005年に「中平卓馬試論」で重森弘淹写真評論賞、2016年に第24回写真協会賞学芸賞を受賞。
IZU PHOTO MUSEUM研究員として「荒木経惟写真集展 アラーキー」、「宮崎学 自然の鉛筆」展、「増山たづ子 すべて写真になる日まで」展、「小島一郎 北へ/北から」展などを担当。
単著・共著に『時の宙づり 生・写真・死』、『富士幻景 近代日本と富士の病』、『戦争と平和〈報道写真〉が伝えたかった日本』、『森の探偵 無人カメラが捉えた日本の自然』など。

日時:3/26(土) 18:00 ~ 19:30 (受付17:30〜)
料金:1,500円 (配信視聴:1,000円)
定員:15名
会場:READAN DEAT


このイベントはオンライン配信(イベント後2週間視聴可能)も行います。
詳細・お申込みは以下リンク先からご確認ください。
オンライン配信チケット申込みページ

【リアルでのイベント参加のお申込方法】
以下のコンタクトフォームに題名を「小原さんトークイベント」として、メッセージ本文に
1. お名前 2. 参加人数 3. 電話番号 をご記入の上お申し込みください。
また、お電話(082-961-4545)でも受付けております。

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    2022-03-09 | Posted in EXHIBITION & EVENTComments Closed