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セレクトってなんだろう

日々トークイベントや展示会など何かしら企画しているが、本屋の本来の仕事は、本を仕入れて売ることだ。

八百屋は野菜を仕入れて売り、酒屋は酒を仕入れて売る。花屋、魚屋、眼鏡屋、レコード屋etc。小売業の役割は、市場や卸先から仕入れた商品を消費者に届けること。独自の仕入れルートや時流を読む力、そのジャンルに精通した審美眼を磨き、ライバルが真似できないような商品を取り揃える。ジャンルは違えど、小売専門店にとって品揃えこそが腕の見せどころで、そこにサービスや接客を組み合わせて集客につなげる。つまり、店の個性が反映された商品セレクトが、小売業の基本で要だ。

新刊書店で「セレクト」について考えると、店舗のスタイルによってその意味は変わってくる。まず大型書店の場合、不特定多数の来店者に向けた数百万冊の在庫数自体がセレクトであり、アート系や学術系専門書店の場合、玄人が唸るような一冊を揃えることがセレクトである。町のインディペンデント書店の場合、店主の好みや店の方向性をベースに、リトルプレスやzineに加え、取扱い可能な一般流通の書籍を組み合わせてセレクトする。売上だけのインスタントな本よりも、熱意のこもった本を選びたいと思うのは皆同じで、そういう本はSNSで入荷日にこぞって紹介されることが多々ある。それは「店の個性が反映された商品セレクト」なのだろうか、と正直思うこともある。だけど、他の店と被っていても、自信を持って選んだその一冊を誰かに届けたいという意志そのものが重要なんだと思う。

いわゆる作家もののうつわの場合、本と比べて需要と供給のバランスが異なる。一度の生産数や流通量に限りがあり、そのなかで店主の嗜好や店の志向をベースにセレクトを行う。個展を開催する店や専門のギャラリーも多い。その仕入先は作家本人であり、関係性を築く上でも店のセレクトが重視される。それを踏まえた上で、SNSのいいねの数が店の「セレクト」に影響を及ぼしていないだろうか。個人が情報発信を行い、店も作家も可視化されたニーズを手軽に読み取れる時代だからこそ、自分自身の基準がブレないよう意識する必要がある。モニターのなかの二次情報を追いかけるのではなく、自分の内から湧き上がるものに目を向けなくてはならない。

オンラインで何でも揃う成熟した消費社会において、品揃えの独自性を突き詰めると、オリジナル商品や一点物に行き着く。しかし、純粋に「セレクト」を通して、驚きや喜びを与えてくれる店もある。それは見たことのない珍しい物を選んでいるということではなく、集められた一つ一つの物から醸し出される、言わば店の文化そのものに心が動かされる。それは店主の努力とセンス、経験や勘からもたらされるもので、その本質は簡単にマネできない。本屋でもうつわ屋でもそういう店に憧れるし、二足のわらじだけど、そうなりたい。道のりは長いけれど本気でそう思っている。

2019-08-20 | Posted in THANK YOUComments Closed 

 

『負うて抱えて』原画展&トークイベント

歌手として、僧侶として、母として、娘として、ままならない日常を仏教の教えとともに生きていく。故郷広島の寺院に暮らしながら音楽活動を行う二階堂和美さんの珠玉のエッセイ集『負うて抱えて』。表紙や本文を飾ったのは、同じく広島を拠点に活動する画家・nakabanさんのイラストでした。

このたび、新聞での連載当時から添えられたnakabanさんのイラスト原画展を開催します。伸びやかなドローイングのほか、貴重なスケッチ段階のイラストも合わせて展示します。

また、会期初日にはお二人のトークイベントも開催します。連載中のこぼれ話や広島のことなど、感性豊かなお二人のトークセッションです。

二階堂和美 にかいどう かずみ
1974年生まれ、広島県出身のシンガー・ソングライター。ジャンルにとらわれない音楽性と、類まれな歌唱・表現力で国内外から幅広く支持されている。1997年より本格的に音楽活動をスタートし、現在までに、約20作を発表。東京での活動を経て、現在は広島県在住。実家は浄土真宗本願寺派のお寺で、自身も僧侶である。2013年公開のスタジオジブリ映画『かぐや姫の物語』では主題歌「いのちの記憶」を作詞・作曲・歌唱。著書に『二階堂和美 しゃべったり 書いたり』(屋上)がある。

nakaban なかばん
1974年生まれ。画家。広島市在住。絵画を中心にイラストレーション、文章、絵本、映像作品を発表している。新潮社『とんぼの本』や本屋『Title』のロゴマークを制作。著書に『よるのむこう』(白泉社)、『ぼくとたいようのふね』(ビーエル出版)、『窓から見える世界の風』(福島あずさ著、創元社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著、ナナロク社)ほか。画家としての活動の傍ら、音楽家のトウヤマタケオと『ランテルナムジカ』を結成し、音楽と幻燈で全国を旅する。

展示とトークイベントの会場は、広島市中区本川町の建築事務所、Small House Design Lab.のギャラリースペース「A not B」。当店から徒歩5分の素敵なギャラリーです。

nakaban 負うて抱えて原画展

会期:9/14(土) 〜 9/23(月・祝)
時間:13:00~19:00
会場: A not B(〒730-0802 広島市中区本川町2丁目1-31岡部ビル1F Small House Design Lab.内)
入場無料

二階堂和美 × nakabanトークイベント

日時:9/14(土) 18:00~19:30 (受付17:00〜)
料金:1,500円
定員:70名
会場: A not B(〒730-0802 広島市中区本川町2丁目1-31岡部ビル1F Small House Design Lab.内)

【お申込み方法】
以下のコンタクトフォームに題名を「負うて抱えてトークイベント」として、メッセージ本文に
1. お名前 2. 参加人数 3. 電話番号 をご記入の上お申し込みください。
また、お電話(082-961-4545)でも受付けております。

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    2019-08-17 | Posted in EXHIBITION & EVENTComments Closed 

     

    Ground

    「土地の記憶」をテーマに長崎の風景を撮影した写真家・佐々木知子さんの『Ground』。表紙の一枚「稲佐山から爆心地を臨む」、この一枚を撮ったと同時に佐々木さんに「Ground」という言葉が去来し、そこから写真集の製作が始まりました。

    ページを初めてめくった時、電車内のつり革、ブラインド越しの風景、車のいない道路などその一枚だけでは「長崎」と直結しないような、言い換えると、写真集として編まれることによって意味を持つ写真が多く収められていると感じました。しかし、巻末のキャプションを確認し、場所の意味に触れ、改めて見返すと、あることに気づき始めました。

    写真は、シャッターを押した「その瞬間」だけでなく、否応なく「過去」と繋がっている。そこに写された何気ない風景は原子爆弾で廃墟となった過去を持ち、その街が経験した過去の上に人々は「今」を築き生きている。

    写真は、そのイメージについての知識や情報量で受け取り方が変わるけれど、佐々木さんは声高に主張することなく、だけど胸に残るコントラストで、何気ない街角にも積み重なった「土地の記憶」に触れる余地を読者に与えていると感じています。そしてそれは自分たちの身近な風景に想いを巡らす契機にもなっていきます。

    土地が記憶した悲しみの過去を忘れない。誰もが知っているモニュメントだけでなく、ありふれた風景を前に想いを馳せる、祈りにも通じる一冊です。

    寄稿:根無一行(宗教哲学者)
    デザイン:漆原悠一
    翻訳:前野有香
    発行: t e n t o

    H263×W191mm 104 ページ ハードカバー 日本語/英語
    500部

    ¥4,500 +税(WEB SHOP

    2019-08-09 | Posted in BOOKSComments Closed 

     

    アウト・オブ・民藝 −玩具編−

    「なぜこれは民藝じゃないの?」民藝運動と近しい存在でありながら「その他」として扱われてきたモノたちを愛情をもってすくい上げた『アウト・オブ・民藝』。資料を読み解き、相関図から見えてくる「周辺」。絶対的な美を掲げる民藝の「周辺」には、美術を社会活動として取り入れる者、我が道で物を蒐集し体系化する者、生活の中で創作を実践する者など、個性的でバラエティ豊かな人たちが浮かび上がってきます。

    今回ギャラリースペースでの展示は、アウト・オブ・民藝の代表格「玩具」にスポットを当て、壁面にインストールされた相関図を通して、今なお愛され続ける玩具のジャンル草創期に足を踏み入れます。

    会期:9/7(土)〜9/23(月・祝)

    9/7(土)トークイベント「資料で読み解く民俗・玩具・民藝」

    『アウト・オブ・民藝』の著者、軸原ヨウスケさんと中村裕太さん、そして書籍の元となった五回のトークイベントに全て参加した広島の郷土玩具愛好家・千葉孝嗣さんの三人によるクロストークを開催します。戦前の雑誌『民藝』に掲載された柳田國男と柳宗悦の対談や、渋沢敬三、柳田、柳のモノへの視線の違い、郷土玩具以外の「玩具」の話など、資料を元にその背景に迫ります。

    軸原ヨウスケ
    1978年生まれ、岡山在住。「遊び」をテーマにしたデザインユニットCOCHAE(2003年ー)のメンバーでありデザイナー。伝統こけし工人とのプロジェクト、ドンタク玩具社でも活動。郷土玩具、こけしに興味を持つ。著書に『kokeshi book -伝統こけしのデザイン-』(青幻舎)2010年、『武井武雄のこけし』(pie international)2012年、『日本のおもちゃ絵 -絵師・川崎巨泉の玩具帖-』 (青幻舎)2014年など。折り紙パズル「ファニーフェイスカード」が日本グッドデザイン賞(Gマーク)2008受賞、『猫のパラパラブックス』(青幻舎)で造本装幀コンクール2013審査員奨励賞、『トントン紙ずもう』(コクヨWORK×CREATE)がグッドトイ2013選定など。近年は「岡山名物きびだんご」(山方永寿堂)などパッケージデザインを数多く手がけている。

    中村 裕太
    1983年東京生まれ、京都在住。2011年京都精華大学芸術研究科博士後期課程修了。博士(芸術)。博士論文「郊外住居工芸論―大正期の浴室にみる白色タイルの受容」。〈民俗と建築にまつわる工芸〉という視点から陶磁器、タイルなどの学術研究と作品制作を行なう。最近の展示に「六本木クロッシング2013:アウト・オブ・ダウト―来たるべき風景のために」(森美術館、2013年)、「第8回アジア・パシフィック・トリエンナーレ」(クイーンズランド・アートギャラリー、2015年)、「第20回シドニー・ビエンナーレ」(キャレッジワークス、2016年)、「あいちトリエンナーレ2016」(愛知県美術館、2016年)、「東アジア文化都市2017京都」(京都芸術センター、2017年)など。工芸を作り手の視点から読み解き、その制作方法を探るプログラム「APP ARTS STUDIO」を運営している。

    千葉孝嗣
    郷土玩具愛好家。小学6年の頃から、郷土玩具に魅せられ、玩具や文献を楽しむ。またその延長で民藝にも関心を抱く。日本雪だるまの会(静岡を拠点とした郷土玩具愛好団体)、日本郷土玩具の会、広島県民藝協会などに所属。普段は全く別ジャンルの勤め人。

    日時:9/7(土)18:00-20:00(受付17:30より)
    料金:1,500円 + 1ドリンク
    定員:30名
    会場:READAN DEAT

    【お申込み方法】
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      2019-08-08 | Posted in EXHIBITION & EVENTComments Closed 

       

      藤田ゆみ(くらすこと) × 金 玖美 トークイベント

      くらすことの日用品展と金玖美 写真集『EXIT』発売記念写真展に合わせて、くらすこと主宰の藤田ゆみさんと写真集『EXIT』からの一枚が『くらすことの本』の表紙を飾るフォトグラファー・金 玖美さんのトークイベントを開催します。

      クリエティブなお仕事と日々の子育てを両立するお二人にそれぞれの本作りのことなど色々とお話をお聞きします。

      藤田ゆみ (ふじた・ゆみ)
      「くらすこと」主宰。ケアワーカー、雑誌編集の仕事を経て、2005 年、自らの妊娠・出産における気づきを軸に「わたし自身のものさしを見つける」をテーマとした“くらすこと”の活動をスタート。食、からだ、子育てなど、暮らしにまつわるワークショップの企画や本の出版、ウェブマガジン、雑貨の店とカフェの運営、イベント企画や本の出版など多岐にわたり活動する。2016年東京から福岡に拠点を移し、現在福岡市在住。高校生から1歳まで、2 男3女、5人の母。2019年『くらすことの本』を創刊。著書に『子どもと一緒にスローに暮らす おかあさんの本』(アノニマ スタジオ刊)。
      http://www.kurasukoto.com

      金 玖美(きんくみ)/ KOOMI KIM
      京都府出身。1997年マガジンハウスへ入社、ポパイやアンアンなどで専属フォトグラファーを務める。2004年 退社1ヶ月後、渡英。London College of communication にてコースを修了。同時にヨーロッパの雑誌の仕事なども手がける。2008年 帰国後、ROCKETにて個展「TRANSIENT」を開催し、同名の作品集を発表。2014年「TOKYO PHOTO 2014」に出展。現在、東京を拠点としてファンション、ポートレートを中心に広告や雑誌、CMやPVなどの映像も手がける。 2児の母。3歳・7歳(渡英当時)息子たちと共に、撮影のため英国を再訪しながら制作した写真集「EXIT」を発表。
      koomikim.com

      藤田ゆみ(くらすこと) × 金 玖美 トークイベント
      「私たちの仕事 / 子育て / 本のこと」

      日時:8/24(土)16:30 – 18:00(受付16:00より)
      料金:1,500円
      定員:30名
      会場:READAN DEAT

      【お申込み方法】
      以下のコンタクトフォームに題名を「藤田さん金さんトークイベント」として、メッセージ本文に
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        2019-08-07 | Posted in EXHIBITION & EVENTComments Closed