EXHIBITION & EVENT
Johanna Tagada Hoffbeck 個展「From brown to pink, from pink to green」

このたび、フランス出身のアーティスト、ジョアンナ・タガダ・ホフベックの広島では初となる個展を開催いたします。「From brown to pink, from pink to green」と題した今回の個展では、春という季節をつぶさに捉えた、庭で過ごすひとときを彷彿とさせる新作の写真を展示いたします。
タガダ・ホフベックは、イギリスのエセックスとフランス北東部の森に囲まれた田園地帯アルザスにそれぞれ庭を持っています。作物の生育に最適な、温暖な気候のアルザス。今年初旬、新型コロナウイルスの影響によるロックダウンとフランス国内の厳しい移動規制によって身動きが取れないなか、彼女が自己と向き合った場所こそがアルザスでした。「長い間、私は躍動の中に静寂を見出していましたが、ここでは静けさの中にある動きと出会いました」と、彼女は世界中を旅したことを思い出しながら記しています。今、彼女の旅はその庭を通じ、彼女自身が歩んできた道へと続いています。静寂に包まれた瞬間、一人きりで過ごしたひととき、そして父・ティエリーと共に庭仕事をして過ごした日々が、彼女の写真には織り交ぜられています。二人がどのように挿し木をし、花束を作り、大切な人に手渡すのか。切り落ちた花を手の中で愛でながら、ハーブティーをお供に何でも語り合う様子を、写真を通して見ることができます。二人の会話は満ち引きするさざ波のよう。静かに作業をしている時はそれぞれ夢想に耽っているようです。

孤独とつながり、タガダ・ホフベックはその両方を写真の中で優しく捉えています。自然の営みに敏感に、そして感受性豊かに。彼女の園芸に対する愛情の源泉は、園芸の才を持つ祖父母が種を撒き、そして育ったもの。いくつかの写真にも写っている同じ土地でガーデニングをしていた祖父母の園芸への愛が、まるで雑草やきのこが生い茂るように彼女の作品にも広がっていきました。それは植物と人との間にあるささやかな関連性。彼女はよく絵を描きますが、彼女の写真もまた絵画のように色彩豊かで表現力があり、常に視覚的な調和を見出すことができます。この間に撮影された写真はすべて『Analog Diary』というタイトルの35mmフィルム作品の一部であり、撮影の数ヶ月後に現像されました。アナログのゆっくりとした作業工程と触覚的な性質は、彼女にとっては、アイデアを植え、後で収穫するような感覚がしたそうです。
今年はウイルスが社会に蔓延し、私たちの世界はほぼすべてが縮小してしまいましたが、そのような中でも、私たちは心の安らぎを得ていました。 彼女にとっては庭が聖域となり、そして何よりも写真を撮ることで、先行きが見えない現在の生活様式を具体的に実践しています。カメラを片手に、生家から毎日10分かけて庭まで歩き、写真を撮る -種類・色・形・質感など丁寧なビジュアルカタログを作る- ということは、この特異な期間において、新しい生活様式となりました。 私たちが不安を感じたときに散歩することには理由があり、心と身体のバランスが乱れたとき庭に向かうことには理由があるのです。いのちはいのちを生む。「この庭は希望を与えてくれました」とタガダ・ホフベックは最後に記しています。彼女にとって庭は自由を意味していました。
会期中は、彼女が主宰するPoetic Pastel Pressの出版物やポストカードなども販売いたします。また、作品は全て販売いたします。
Text Joanna Cresswell and Poetic Pastel Press 2020.
Translation by READAN DEAT

Johanna Tagada Hoffbeck ジョアンナ・タガダ・ホフベック
1990年、フランス生まれ、ロンドン在住。ペインティング、ドローイング、インスタレーション、彫刻、映画、写真、やわらかく繊細でエコロジカルなメッセージが含まれたテクスト、など様々なメディアを用いるアーティスト。グループ展多数。個展としては「Épistolaire Imaginaire- Merci 」(Galerie Jean-Francois Kaiser, 2017)、「Take Care – きをつけて」(Nidi Gallery, 2018)。 2014年に、コラボレーションプロジェクト Poetic Pastelを設立。2018年に出版プロジェクト「Journal du Thé – Contemporary Tea Culture」始動。2018年には最初の作品集「Daily Practice」(InOtherWords) が出版されている。
https://www.johannatagada.net/
広島県民藝協会 工人展

広島県民藝協会主催、協会員でもある県内外14名の工人の作品を販売する展覧会を開催します。
誰もが新型コロナウイルスの影響を受けるなか、広島県民藝協会として、作り手を支え、使い手に楽しんでもらえるような機会を作れないか、という思いで企画されました。
今回は店頭販売に併せ、カタログによる通信販売も行います。以下のリンク先より、カタログをご覧いただけます。メールでのご注文は、店頭販売開始の二日後とさせていただいております。予めご了承ください。
工人展カタログ(PDF) 10/25 19時更新
メールでのご注文受付期間:10/19(月)13:00 〜 11/1(日)17:00
参加工人(五十音順)
・阿部 眞士(磁器)
・石飛 勲(磁器)
・石飛 勝久(磁器)
・稲留 清彩(陶器)
・井上 泰秋(陶器)
・今田 史朗(染織)
・織田 達也(磁器)
・駒木根 圭子(染織)
・出嶋 正樹(陶器)
・西川 孝次(ガラス)
・福田 喜子(染織)
・松浦 順子(こぎん刺し)
・弓場 直子(型染め)
・脇坂 より子(染織)
店頭販売期間:10/17(土)〜11/1(日)
小鹿田焼 展

年に一度のペースで開催している民藝の企画展、今年は小鹿田です。大分県日田市の山中、10軒の窯が制作する小鹿田焼は、水車を利用して地元の土を精製し、登り窯の強い火力で焼いた日常陶器。親から子へ窯を受け継ぐ一子相伝の伝統、特大サイズの甕や壺など大物づくりの技術も今に継承されている、日本を代表する民窯の一つです。
展示販売する器は130点ほどと少なめですが、代表的な飛びカンナの文様をはじめ、刷毛目や櫛目、指描きなど、同じ技法でも作り手それぞれの個性が出ています。今回も鎌倉・もやい工藝さんから届けていただきました。
会期中は通販にも対応いたします。ピックアップしてWEB SHOPで販売する予定ですが、「SNSにアップされた写真の商品が気になる」「現在の展示風景をみたい」など、細かなやりとりは、LINEでご連絡ください。こちらより当店公式アカウント「友だち追加」をお願いいたします。
会期:9/5(土)〜9/13(日)
オンライントーク「生活工芸と雑誌メディア」
お知らせ(8/18)
開催を延期しておりました本イベントは、状況を考慮した結果、9/30(水) の19時より、東京と広島を繋いだオンライントークにて開催することにいたしました。お申込みはこちらからお願いいたします。





“生活工芸はそれからしばらく後の九〇年代、バブル崩壊以降に始まったと言います。非日常から日常へという流れは、景気悪化でさらにはっきりと姿を現した。(中略)そして生活工芸はこの「暮らし系」の流れになるのだと思います。彼らが、そして僕らが、大きな物語がなくなり人々が共通の繋がりを失ってバラバラになった、そんな社会のなかで選んだ生き方が、ある程度狭くても仕方がない、「身の丈にあった生き方をしよう」というものだったのではないでしょうか。”
(三谷龍二「はじめに」『工芸批評』)
“「暮らし系」ムーブメントの主体となり、その運動を牽引したのが主に(大人の)女性であったこと、この事実はいくら強調してもし過ぎることはない。このムーブメントを広め、リードした雑誌『ku:nel(クウネル)』(二〇〇三年創刊)のキャッチコピーは「ストーリーのあるモノと暮らし」。その内容が指し示すのは、自分の身の回りにあるさまざまな事物の中に「物語」を見いだすことで、日々の生活の中に肯定的な価値を発見しようというメッセージだ。”
(井出幸亮「『ライフスタイル』がブームである」『「生活工芸」の時代』)
木工家の三谷龍二さんと、工芸誌『Subsequence』編集長の井出幸亮さんの上記の引用文を参考にすると、「生活工芸」は身の丈にあった生き方を大切にする「暮らし系」ムーブメントのなかで支持され、その運動におけるバイブル的存在が『ku:nel』でした。今回のトークイベントは二部構成で、「生活工芸」と「雑誌メディア」の関係性に迫ります。登壇者として、前出の井出幸亮さんに加え、『工芸青花』編集長の菅野康晴さん、メディア文化史を専門とする研究者の阿部純さん、画家のnakabanさんをお招きします。
第一部では、暮らし系雑誌について研究を行う阿部さんを中心に、暮らし系雑誌が注目されるようになった2000年代を基点として、資料を元にその歴史や社会への影響について考察し、生活工芸との関係性を紐解いていきます。雑誌の仕事に数多く携わってきた井出さん、nakabanさんには当事者としてのお話も伺います。
第二部では、井出さんと菅野さんを中心に、「生活工芸派」の作家視点も交えながら、生活工芸と雑誌や出版物の関係性について見解をお聞きします。また、編集長という立場からそれぞれの工芸誌が担う役割や、誌面を通して読者に何を伝えるのか、お話を伺います。
進行役として、READAN DEAT 店主・清政光博もお話させていただきます。一部・二部とも、生活工芸の作り手視点だけでなく、使い手(=消費者)視点も交えながら、出来るだけ全体像を俯瞰し、生活工芸の行方について考察していきます。
井出幸亮(いで・こうすけ)
編集者。1975年大阪府生れ。雑誌『BRUTUS』『POPEYE』(ともにマガジンハウス)ほか雑誌、書籍その他で編集・執筆活動中。著書に『アラスカへ行きたい』(石塚元太良との共著/新潮社)。主な編集仕事に『ズームイン、服』(坂口恭平著 / マガジンハウス)、『My Archive』(中村ヒロキ著 / マガジンハウス)など。『「生活工芸」の時代』(三谷龍二編 / 新潮社)では日本雑貨論を執筆。『Subsequence』編集長。
菅野康晴(すがの・やすはる)
『工芸青花』編集長。1968年生れ。1993年新潮社入社。『芸術新潮』及び「とんぼの本」シリーズの編集部に在籍し、美術・工芸・建築を主に多くの企画を手がける。担当した本に、川瀬敏郎『一日一花』、坂田和實『ひとりよがりのものさし』、中村好文『住宅読本』、金沢百枝・小澤実『イタリア古寺巡礼』、木村宗慎『利休入門』、三谷龍二他『「生活工芸」の時代』など。2014年に「青花の会」を始める。共著に『工芸批評』(新潮社青花の会)。
阿部純(あべ・じゅん)
1982年生まれ、東京都出身。広島経済大学メディアビジネス学部准教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門はメディア文化史。研究対象は、墓に始まり、現在は各地のzineを収集しながらライフスタイル研究を進める。共著に『現代メディア・イベント論―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』(勁草書房)、『文化人とは何か?』(東京書籍)など。
2017年からは「住まいマガジン びお」にて「『ていねいな暮らし』カタログ」を連載中。現在住んでいる尾道では『AIR zine』という小さな冊子の制作も行っている。
http://air-zine.tumblr.com
nakaban(なかばん)
画家。広島市在住。絵画、書籍の装画、文章、絵本を発表している。
主な著作に絵本『よるのむこう』(白泉社)『ことばの生まれる景色』(辻山良雄との共著 / ナナロク社)『ランベルマイユコーヒー店』(オクノ修作 / ミシマ社) など。
日時:9/30(水) 19:00~20: 30
料金:1,500円
お申込みはこちらからお願いいたします。
立花文穂 『傘下』出版記念展


傘をさす。雨や紫外線から身を守るため。
75年前、その爆弾は街を焼き尽くすだけでなく、放射能を含んだ黒い雨を降らせました。
傘下に入る。大きな力に守られるため。
同盟という名の利害関係によって、この国はその爆弾の存在を黙認しています。
写真集『傘下』。アーティスト 立花文穂さんが自ら撮影し、製本したこの本は出身地である広島が舞台です。広島平和記念公園にある慰霊碑、その地下には、原爆で亡くなった方の名前を記録した原爆死没者名簿が安置されています。そのなかの数冊は、製本所を営んでいた立花さんのお父さんが製作を担当しました。
広島を撮ること。本を作ること。二つのルーツによって編まれた写真集。ページ後半には、兄の立花英久さんによる小説を収録しています。
今回の出版記念展では、写真集『傘下』の販売に併せて、本書で用いられた書の作品も展示します。
会期:8/15(土)〜8/30(日) 作家初日在廊
『傘下』製作風景の動画
https://vimeo.com/user110929903
『傘下』はWEB SHOPでもお買い求めいただけます。
https://readan-deat.stores.jp/items/5f377cc57df28121f08dba21