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只木芳明の木工


木工作家・只木芳明さんの個展を二年連続で行いました。独学で歩みだした木工の道は、未舗装どころか、誰も選ばないようなケモノ道。華奢でありながら実用的なフォルム、漆や柿渋によって仕上げる古色を帯びた色味、鋭い感性を武器に彫り出した作品は強烈な個性を放っています。


糸巻き、割り箸、楊枝、絵馬など、只木さんの作品には実用性に欠ける物、使い捨てられる物、その物自体の価値が曖昧な物があります。二回目の個展では、そのような物たちを「B面」として定義しました。本来の用途を備えていながら用途を超えた存在感を持つB面作品は、飄々としていてこちらを試しているようでもあります。

B面が放つ光は杯やスプーンなど実用性のある「A面」をより際立たせています。緻密に削り出された薄く艶やかなかたちは、本来の用途において抜群の使いやすさを兼ね備えています。普段作家自身はA面もB面も同じスタンスで取り組んでいますが、作品として成立するか予測がつかないB面から得たものを、カトラリーなど定番作品に還元し、両輪でぐんぐん進化しているように思えます。流行り廃りの届かない孤高の道を、優れた嗅覚と溢れる創作欲をエネルギーに駆け上がる若い作家のこれからが楽しみです。

2018-11-12 | Posted in TABLEWAREComments Closed