TABLEWARE

田中啓一のシェイプオブパターン

多角形のカップやプレート。丸く膨らんだ六角形のポット。郵便受けのような壁掛けの一輪挿し。田中啓一さんの作品は、角と線がきっちりと出た大量生産のプロダクトのようにも見えますが、板状の陶土を丹念に組み合わせて作られた「手」の仕事。プラモデルを作るようにパーツを組んで出来る造形は、ろくろの回転運動では得られない複雑で独創的な形です。

マットな金属質の釉薬は鉄製の工業製品のようですが、もちろん錆びることもなく、焼き物ならではのあたたかみも備えています。

陶土からパーツを切り出す際に用いるのは自由なアイデアで切り出した紙の型。型紙から生まれた平面のパーツが立体になる様は、洋服のパターンを想起させますが、変則的な型紙は時に予想してなかった形になることも。統制された工程のなかに潜む未知との出会いに作家自身も惹かれているように感じます。

田中啓一さんは武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科で陶芸を学びます。当初は別の専攻を考えていたそうですが同大の教授だったプロダクトデザイナー・小松誠氏の講義に感銘を受けその道に進みます。鋳込成型の特性を生かし紙袋のシワまでを写しとった花器(MoMA収蔵のクリンクルシリーズ)など、技法とデザインの関係を掘り下げながら、日常生活へアプローチした小松誠さんと同じく、田中さんの器もそのユーモアを使い手に委ねています。

2019-05-31 | Posted in TABLEWAREComments Closed