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書体 shape of my shadow

ポスターやロゴのデザイン、書籍の編集などを手がけるグラフィックデザイナーであり、紙や文字や本をテーマに国内外で作品を発表するアーティスト 立花文穂さん。

立花さんが手がけてきた文字の作品は、路上に落ちいている紙屑や作業場の床に散らばった紙切れの海から、“文字どおり”文字を拾い集めたコラージュや、数字やアルファベットや記号の活字を「とめ / はね / はらい」といったパーツとして組み合わせ、漢字や平仮名として再構成した活版印刷のアートワークなど、唯一無二のタイポグラフィです。

色褪せて所々汚れた紙の上で、見向きもされなくなったアノニマスな文字たちが糊やテープで切り貼りされて踊り出し、使われなくなった活字や罫たちが大胆なレイアウトで再びインクを身にまとう。ざらざらガサガサと紙の手触りや、物理的な積み重なりを眼で感じる作品です。

今回ギャラリースペースで展示中の新作のタイトルは「書体」。ストレートに解釈すると「フォント=文字」ですが、前述した作品とは異なり、文字として認識することができません。

高校生のころ石や銅に彫られた文字を

真似て筆で書いた。

文字が生まれるときのことを考えた。

ぼくは知らなかった線や形が不思議だった。

作品集『書体』の序文には、書道を学んでいた高校時代のエピソードが短く記されています。絵から生まれた漢字。絵だった頃の文字(象形文字)。文字以前の文字。筆を持ち、ビンテージの新聞用紙の上に、文字のような何かを墨で書く。そうして生まれたカタチは原始生命体のようなもの、読めそうで読めない文字未満のものなど、白と黒の世界で上下左右を自在に泳ぐ不思議なカタチ。

素材を元に作られるコラージュや活版印刷の作品と異なり、内側から訪れるイメージを身体の動きに変換し、指先から筆に伝え、書く。「書く体」が残したものは、立花さんの残像=影のカタチなのでしょうか。序文の締め括りで一つの答えが記されています。また、その余白も含めて立花さんのグラフィックデザインの原初的な萌芽のカタチでもあるように感じます。

立花さんのご実家は製本業を営んでいたこともあり、当時の製本機械を使用して、作品集を自ら手作業で製作しています。一枚一枚紙を折って順番に重ね、ガシャンガシャンと一枚一枚機械で束ねて綴じ、背の膨らみを押し潰し、重しを載せて平らにならし、糊を塗り表紙を貼ってようやく出来上がる、本という物体そのものが立花さんの作品でもあります。

¥3,750+税 350部限定
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2019-03-30 | Posted in BOOKSComments Closed 

 

ワンダーウォール

「老朽化による耐震性の問題」「誰もが安心できるクリーンで安全な建物」。物理的に合理的な言葉の前に、「歴史が積み重なったかけがえのない場所」「醸造された文化的な雰囲気」といった曖昧な言葉はかき消される。例えば、現在工事中の横川駅の高架下や、9月末までに寮生全員の退去を求めている京大の吉田寮のように。

学生の街・京都を舞台に、廃寮の危機に瀕した学生寮に住む学生たちを描いたドラマ『ワンダーウォール』公式写真集。脚本を書いた渡辺あや、本書の写真を撮影した澤寛のほか、内田樹、大友良英による寄稿、ドラマのシナリオも収録。

7月に放送された後、多くの反響があり、先日も再放送されたこのドラマ、見過ごせないポイントの一つが、NHKが制作・放送しているところ。時期的にもデリケートなストーリーを、渡辺あやさんやプロデューサーをはじめとした熱量の高い関係者が動き、そしてこのキャスティングしかありえないというような役者がオーディションで集まり、撮影わずか11日間、奇跡というか、生まれるべくして生まれたドラマ。さらにこの写真集、京都のインディペンデント書店・誠光社さんが発売元。

抗うことが目的ではないけど、自動運転な世の中にはしたくない。

¥2,500+税 WEB SHOP

2018-09-20 | Posted in BOOKSComments Closed 

 

TTP




公園の一角にある卓球台。あるときはベンチ、あるときは遊び場、またあるときはスケボーの障害物など、定点観測的に撮影した卓球台は本来の用途を飛び越えて、座るもの、乗るもの、下に潜るものと状況次第で様々に変化して面白いです。

日本人写真家、富安隼久(Hayahisa Tomiyasu)のファースト写真集『TTP』。タイトルの由来は「tischtennisplatte(卓球台)」。当時住んでいたドイツ、ライプツィヒの学生寮、8階の南向きの部屋から見渡せる公園に置かれた卓球台に焦点を当て、デッドパン・スタイル(主観や感傷、ドラマチックな誇張を可能な限り抑え、対象を客観的、中立的に描写する手法)を用いて撮影しています。

環境やモノが人や動物に「行為」を促す性質、アフォーダンスについても考察したくなる一方、ずっとその場に置かれ昼夜問わず様々な用途を提供する卓球台がだんだん健気に思えてくるのは、物にも魂が宿ると考える日本人的感覚なのでしょうか。そういう見方だと最後はちょっと切ないです。

イギリスの出版社MACKが主催する、過去に写真集出版経験の無い作家の出版支援を目的とする「First Book Award」の2018年グランプリ受賞に伴い刊行。

¥5,550+税 WEB SHOP

2018-06-24 | Posted in BOOKSComments Closed 

 

いのちの花、希望のうた


画家と詩人の兄弟ふたりによる画詩集『いのちの花、希望のうた』。

兄の岩崎健一が描く花は、花弁の一枚、葉脈の一筋までを丹念に緻密に捉えていて、慎ましくも力強く輝いています。鮮やかな色彩はいのちを咲かせる喜びの色。画家の花への敬愛が伝わってきます。

弟の岩崎航の五行詩は、勇気と希望と慈しみのうた。病と向き合い、日々の営みのなかで生まれた、五行の短い言葉の連なりは、目で耳で再生されるたび心の奥で響きます。


筋ジストロフィーという、身体の筋肉が壊れやすく再生されにくい難病を抱えながら暮らす二人の絵と詩は、生きた証として、また生きる中で見出した光として創作されたもの。自分自身と向き合うための純粋な創作活動はストレートに胸を打ちます。

あなたへの、そして大切に思う誰かへの花束として。

1,700+税 (WEB SHOP

2018-06-08 | Posted in BOOKSComments Closed 

 

みんぱくの図録


文化人類学・民族学の研究所であり、世界最大級の博物館機能を備えた国立民族学博物館、通称みんぱくの展覧会図録がいくつか入荷しました。

『太陽の塔からみんぱくへ – 70年万博収集資料』 ¥1,600+税

大阪万博を2年後に控えた1968年、世界の諸民族の資料を収集するというミッションに限られた予算と時間のなかで取り組んだ「万博資料収集団」。彼らが1968年から1969年にかけて収集した世界各地の標本資料や活動の様子を紹介した一冊。60年代後半から70年代にかけて世界が大きく動いていく状況のなかでの民族文化や地域社会の様相を描き出す。

『イメージの力』 ¥1,600+税

歴史を通じて人間が生み出してきた様々なイメージ。そのつくり方や受けとめ方に、人類共通の普遍性はあるのか。 みんぱくが所蔵するコレクションのなかから約600点の造形を精選。

『ビーズ』 ¥1,100+税

飾り玉、数珠玉、トンボ玉などを総称するビーズ。人類がつくりだした最高の傑作品のひとつであるビーズについて、つくる楽しみ、飾る楽しみをとおして世界の人びとにとってのビーズの魅力を紹介。

『現れよ。森羅の生命 – 木彫家 藤戸竹喜の世界』 ¥1,800+税

旭川を拠点に「熊彫り」を生業としていた父のもとで、12歳から木彫を始めた藤戸竹喜(ふじと たけき)は、父祖の彫りの技を受け継ぎながら、熊をはじめ狼やラッコといった北の動物たちと、アイヌ文化を伝承してきた先人たちの姿を木に刻み、繊細さと大胆さが交差する独自の世界を構築。卓抜なイメージ力・構想力とともに、生命あるものへの深い愛情に根ざした生気あふれる写実表現。 動物たちの俊敏な動きをとらえた初期作から、民族の歴史と威厳をモニュメンタルに伝える等身大人物像まで、70年にわたる創作活動の軌跡とその背景をたどった作品集。

『屋根裏部屋の博物館』 ¥2,762+税

実業家・渋沢敬三が学問への憧れを捨て去れず、自邸内の物置にアチックミューゼアム(屋根裏部屋の博物館)を設け、玩具から始まり、庶民の生活資料の収集と調査を行った。このような資料を渋沢は「民具」と命名し、日本の民具研究から周辺諸民族の物質文化の比較研究へと研究領域をひろげ、独自の渋沢民俗学を形成した。アチックミューゼアムの民具と民具研究の思想がうかがえる一冊。

『なかはどうなってるの? 民族資料をX線でみたら』 ¥667+税

人間が多様な素材からつくる道具の数々をX線写真で観察すると…。モノのもつ魅力のあらたな発見。 民族資料にX線透視調査を行い、実物とX線写真を比較しながら,モノの中に秘められた様々な側面を紹介。外見たけでは気がつかなかった発見や、これまでとは違ったモノの見方ができる一冊。

 

今日、世界の辺境・秘境へ手元のスマホ画面のなかでも訪れることができますが、もう一歩深く分け入りたいと思ったとき、みんぱくを訪れて文化の多様性を肌で感じてみるのもいいかもしれません。テクノロジーの進歩とともに手放してしまうには惜しい人類の英知の一端、まずは図録で探求してみてください。

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2018-05-10 | Posted in BOOKSComments Closed