2018-04
阿部海太の本
埼玉出身、神戸在住の画家・阿部海太さんの描き下ろし絵本『みずのこどもたち』。人、動物、生き物すべての根源にある「水」をテーマにした一冊。光輝く緑は滋養に満ちた水の色。脈々と命をつなぐ水は人知を超えた意志を持っていて、この世界をつくっている母なる存在。ひとつひとつの命は繋がっていることを教えてくれています。
キャンバスいっぱいに広がった躍動感のある原画は、あまりのエネルギーに見ているとくらくらするほど。モニター画面では伝わらないマジカルで鮮烈な色彩に、もう一つの世界に交信するような感覚をおぼえます。
阿部海太さんは東京藝術大学でデザインを学びますが、ずっと好きだった絵の世界に飛び込むため、卒業後ドイツに渡ります。その1年後、新たな環境を求めてメキシコへ。そこでフォークアートと出会います。西洋美術の価値観とは全く異なる、原始的で力強い土着の民衆芸術に触れ、だんだんと自分自身が描きたい世界に近づいていきます。
帰国後、絵画や絵本の制作を開始。2012年には写真家、デザイナー、装丁家とともに、本作りから販売を行うインディペンデントレーベル「Kite」を結成。ブックフェアへの出展、ギャラリーでの個展など精力的に活動を始めます。
2016年にリトルモアから刊行された『みち』。どこまでも続く道。幻想の世界。出てくる言葉は「あるく」と「はしる」の2語のみ。元々は私家版として生まれたタイトルでしたが、一部のインディペンデント書店で話題を呼び、その後、新装改訂版としてメジャーデビュー作となりました。絵本作家としての活動の原点とも言える一冊です。
「意識のめざめ」をテーマにした『めざめる』。朝めざめて夜ねむる。まぶしい光、そよぐ風、夢のなかのもう一人の私。当たり前のように過ごしているこの世界の不思議にめざめる。言葉を学び、知識を得ていくにしたがって忘れてしまう、あらゆる「初めて」と対峙した瞬間に呼び戻してくれるようです。
天地誕生や人間のはじまりといった世界各地に残る創造神話を、阿部さんの絵とともに紹介するイラストブック『はじまりが見える世界の神話』。北欧神話、マオリ族の神話、琉球神話など遥か昔から脈々と、時代の中で一部を失いながら語り継がれてきた物語。阿部さん自身も強く惹かれている神話世界を想像力豊かに描いています。
2016年の『みち』以降、立て続けに4タイトルの絵本を出版社から刊行する一方で、Kiteとしての活動やリトルプレスの制作も続けています。親交のある東京の書店・SUNNY BOY BOOKSとともに作った『All Seeing Eye』は『みずのこどもたち』のスピンオフ作品集。白黒の油彩で描かれた静寂の世界。
2017年にKiteから刊行された『pinhole』。情景と記憶、その限られた空間に現れる一瞬をほのかに照らす一冊。ミシン綴じの本のページは幅が短かったり、窓のある函から覗く絵は少し厚めのカードだったりと、凝った造本はKiteの真骨頂。
阿部さんの作品が放つ生命力に、二次元に命を与えること、絵を描くことの神秘性について思いを巡らせます。阿部さんは絵を通して、目には見えない、科学や数字で現すことができない、この世界の普遍に迫っているようです。
「窓から見える世界の風」原画展
それぞれの土地で、それぞれの窓に舞い込む、50の風の便り。
地球上では地域によって様々な風が吹き、その土地の気候や風土を形作っている。ある風は恵みの雨をもたらすが、またある風は人間の生活の脅威となる。そして人々は親愛や畏敬の念を込め、古くから風に様々な名前をつけてきた。
気象学者・福島あずささんが集めた世界の50の風を、画家・nakabanさんの絵と散文で紹介・解説するイラストブック『窓から見える世界の風』。今回ギャラリースペースではその原画の展示、nakabanさんの描き下ろし作品の展示販売を行います。
福島 あずさ
1982年山梨生まれ、東京育ち。首都大学東京大学院博士課程修了後、2012年より神戸学院大学人文学部講師。学生時代に参加したネパールでのボランティア活動を通じてアジアモンスーンに関心を持ち、そのまま研究者の道へ。専門はアジアモンスーン地域の気候・気象学。最近は、他分野の研究者との交流を通じて知った、インド・アッサム州の茶農園や、日本の古い民家の室内環境などにも興味を持っている。
nakaban(ナカバン)
画家。旅と記憶を主題に絵を描く。絵画作品を中心に挿絵、絵本、漫画、文章、映像作品を発表する傍ら、音楽家のトウヤマタケオと『Lanternamuzica』を結成し、音楽と幻燈のステージを上演。2013年には新潮社「とんぼの本」のロゴマークを制作。主な作品に絵本『よるのむこう』(白泉社)、『みずいろのぞう』(ほるぷ出版)、『ないた赤おに』(浜田廣介作/集英社)、『フランドン農学校の豚』(宮沢賢治作/ミキハウス) 等。
会期:5/3(木/祝)〜5/20(日)
【5/17(木)】トークイベント「風に想いを馳せてみる」
著者である気象学者・福島あずささんと画家・nakabanさん、この本を担当した編集者・内貴麻美さんをお招きしてトークイベントを行います。福島さんによる世界の風のお話に交えながらそれぞれの視点で本書の魅力に迫ります。
【日時】2018/5/17(木)19:30~21:00(受付19:00より)
【料金】1,000円
【定員】25名
【会場】READAN DEAT
【お申込み方法】
以下のコンタクトフォームに題名を「世界の風トークイベント」として、メッセージ本文に
1. お名前 2. 参加人数 3. 電話番号 をご記入の上お申し込みください。また、お電話(082-961-4545)でも受付けております。
コンタクトフォームから送信できない場合、上記と同じ項目を以下のメールアドレスにお送りください。
info☆readan-deat.com ☆は@に置き換えてください。