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金玖美『EXIT』刊行記念展

幼少の頃から憧れ続けたイギリスに、作者が最初に滞在したのは2004年。以来、その素顔を撮り続けてきた。2019年現在、そんな英国に大きな変化が訪れようとしている。EUからの離脱、「BREXIT」(Britain=英国とExit を組み合わせた造語)である。

1冊の写真集「EXIT」を通して、時代を経て移り行く景色の断片とそこで暮らす、ジェンダーや国境を超えた多様な人々の姿を垣間見ることができる。ドキュメンタリーでありながら、空想とも現実取れる世界が広がり、そこに宿る物語を多義性のあるものとして解放している。

多様性とは、国境とは −−−− 思いを巡らせ、2004~2018年にかけて撮影された写真をまとめた作品集。このたびギャラリースペースでは「EXIT」の刊行記念展を開催します。

金玖美の写真本。EU離脱に揺れるイギリスに彼女の視点で寄り添おうとしている、といっても硬くない。ニンゲンっておもろはかないわ的な著者ならではの目線の位置が心地よい写真たちであります。彼女の窓を通じて覗かせてもらう裏庭や乱雑な部屋への共感に、イギリスとニッポンの距離を忘れる。国がどうあれ、人はそこで生きていく。本の佇まいも良い。著者の名前に合わせて小口も金だぜ。
寺田克也

かっこよくまとまろうとする手前、ふと気の抜けた瞬間に愛おしさが溢れている。それぞれの国境を越えて集った人々が残していく偉大なものとは、このように何気なさをちょっと越えた風景かもしれない。
ほしよりこ

「ブレグジットにあわせてリリース」のつもりが、ブレグジットを追い越してしまった(笑)、でも肩を怒らせて顔を赤くした政治家たちばかりのニュース映像には決して出てこない、イギリスをイギリスたらしめている無名の、市井の人々のくらし。それがここにあります。
都築響一

金ちゃん(僕が駆け出しの頃からよくしていただいたのでこの呼び方をしております)が写すものは、写真の中にその色がなくても、どこか渋いイエロー、クリーム色みたいな穏やかな暖み、決して強くはないが美しい陽差し、のような明るさがずっと共通してあって、本人のキャラクターもまさにそんな淡いイエローみたいなあたたかい人。「写真家の色、って本当にあるんだなあ」っていつも不思議に思います。
渋谷直角

金 玖美(きんくみ)/ KOOMI KIM
京都府出身。1997年マガジンハウスへ入社、ポパイやアンアンなどで専属フォトグラファーを務める。2004年 退社1ヶ月後、渡英。London College of communication にてコースを修了。同時にヨーロッパの雑誌の仕事なども手がける。2008年 帰国後、ROCKETにて個展「TRANSIENT」を開催し、同名の作品集を発表。2014年「TOKYO PHOTO 2014」に出展。現在、東京を拠点としてファンション、ポートレートを中心に広告や雑誌、CMやPVなどの映像も手がける。 2児の母。3歳・7歳(渡英当時)息子たちと共に、撮影のため英国を再訪しながら制作した写真集「EXIT」を発表。
koomikim.com

金玖美 写真集『EXIT』刊行記念写真展
会期:2019年8月24日(土)〜 9月2日(月)

同時開催
くらすことの日用品展
・藤田ゆみ(くらすこと) × 金 玖美 トークイベント

2019-08-07 | Posted in EXHIBITION & EVENTComments Closed 

 

くらすことの日用品展

「わたし自身のものさしをみつける」をテーマに活動する「くらすこと」が創刊した『くらすことの本』。暮らしや食、こども、 お母さん、からだとこころ、家族、子育て、教育、つながり、女性としての生き方などのテーマとし、【今を生きるわたしたちの新しい智慧】を紹介、提案しています。

今回、『くらすことの本』刊行記念として、くらすことがおすすめする日用品を集めて、本の紹介も兼ね全国各地で開催している「”くらすこと”全国キャラバン」が広島に!おすすめの台所道具や器、自然な香りが人気のFloatのナチュラルコスメ、おいしいものなど、くらすことの店の定番アイテムが並びます。

◎8月24日(土)販売のおいしいもの

アダンソニア
福岡県糸島市の海辺の町で、ご夫婦二人で営む野菜料理店。くらすことwebマガジンでも昨年、連載でその暮らしぶりをご紹介いたしました。
糸島・海辺の手仕事料理店 “アダンソニア”という、ものさし

ゆかりさんの作る人気のフォトジェニックなおやつを、今回、ご紹介させていただきます。

Bion
大正ロマンの空気が漂う福岡県の門司港にて、フランス地方菓子や季節の果物を焼き込んだやケーキが評判のbionさん。
福岡糸島のおやつと雑貨、くらすことにて、毎月お菓子の販売をさせていただいています。目を見張る、見た目と佇まいの美しさ。自分へのご褒美にしたくなる焼菓子です。

『くらすことの本』刊行記念 “くらすこと” 全国キャラバン vol.6
くらすことの日用品展
会期:2019年8月24日(土)〜 9月2日(月)

同時開催
金玖美 写真集『EXIT』刊行記念写真展
藤田ゆみ(くらすこと) × 金 玖美 トークイベント

2019-08-06 | Posted in EXHIBITION & EVENTComments Closed 

 

other mementos

宙に浮いているようなガラス瓶の上の青りんご。遠近感が掴めないフェンス越しのテニスボール。とるに足らない車窓の景色の前でぼやけて浮かぶ女性の横顔。人気のない街角。剥製なのかも分からない無言の動物たち。見慣れないイメージの連続はまるで白昼夢の世界。

広島出身の写真家・幸本紗奈さん初めての写真集『other mementos』。本来ならばピントが当たるべき部分の焦点はずれ、思わぬところでピントが合った、不明瞭な写真ですが、居心地の悪さは微塵も感じられず、むしろ既視感を覚えます。ああ、これは物思いにふけるときの目線の先に似ている。意識と無意識の間で視覚が捉える不思議な世界。

幸本紗奈さんがシャッターを切る瞬間、なぜそこに目を向けたのか分からないまま、はっきりとしない「予感」を撮影するそうです。暗室作業は彼女にとって重要で、同じネガフィルムを色味を変えて何枚も現像したり、時間をかけて写真と向き合ううちに、その予感した美しさに気づくのだと言います。

そのためか、作品に明確なテーマはありません。また、写真の意図を読み取る必要はないと言います。「心を鎮めてみてもらえたら」と。しかし読み取ることがそもそも難しい。ホテルのような部屋の中、ガラス瓶の上の青リンゴ、博物館で展示された石像など被写体は様々ですが、いつ撮影されたのか、昼なのか夜なのか、国内なのか海外なのかといった、日時や時間や場所といった情報が排除されています。テーマもなく、具体的な情報も感情表現もない写真を前に、少し戸惑いながらも、ただぼんやりと眺める。抑揚のないイメージだからか、見続けていても不思議と見飽きません。

観る者にとって何の関係性もないはずの一枚の写真が、ある瞬間に心の奥底にある何かと結びついて、懐かしさや物悲しさ、嬉しさ、音や匂いなど、特定の感覚を思い起こさせる。幸本さんは、写真という表現を通して、感覚的なものを呼び覚ます何かを探ろうとしています。

幸本さんの写真を初めて見たのは3年前の本と自由での個展でした。次は今年の2月、ふげん社で行われていた個展にも出張に合わせて運良く足を運ぶことができました。そして6月下旬、Baciの内田さんから届いた「広島出身の写真家の本を作っているので、販売や展示のことなど、相談させてもらえませんか」というメール。そこに幸本さんの名前を見たときの驚きと興奮、そして完成した本を見て納得しました。

何度も話し合い、小手先の売りやすさに走らず、写真家の「曖昧さ」までをストレートに形にした写真集。 Baciがこれまで刊行した安西水丸さん今井麗さんの素晴らしい2冊の作品集に引けを取らない強度があります。

明快さもなく強烈さもない、ぼんやりとした曖昧な写真群に、彼女の際立った作家性が現れています。表紙カバーの色も透明なエンボス文字もミステリアス。ページをめくり心を鎮める視覚体験を共有してみてください。

A4判変型(H210☓W180mm)上製本 48ページ オールカラー
掲載作品点数23点 デザイン:村橋貴博(guse ars)
700部限定

4000円+税(WEB SHOP

2019-08-05 | Posted in BOOKSComments Closed 

 

fancomi 個展「それはまたべつのはなし」

イラストレーター・fancomiさんの作品集「So Re Wa Mata Betsu No Hanashi」は、53枚のカードを上下左右に組み合わせて自由に物語を作って楽しむことができ、ポップで不思議なfancomiワールドが広がっていきます。今回ギャラリースペースでは、作品集刊行記念展を開催します。

fancomi
イラストレーター。1980年埼玉生まれ。2004年A&A青葉益輝広告制作室入社。現在イラストレーターとして多くの個展、グループ展で作品を発表、その他広告・書籍・雑誌・CD・グッズ展開などジャンルに捕われず幅広く活動中。第3回グラフィック「1_WALL」ファイナリスト。2016年にはガーディアンガーデンにてfancomi展「tale」を開催する。
http://www.fancomi.com/

会期:8/3(土)〜8/18(日)

8/3(土)fancomiさんの似顔絵イベント

fancomiさんがあなたの似顔絵をお描きします。fancomiワールドのポップな似顔絵は一枚の作品となっていて、似顔絵を描いてもらうのが初めてという方にもおすすめです。

日時:8/3(土)
定員:10枠
料金:3,500円+税   (お一人30分ほど)
会場:READAN DEAT

※定員となりました。ご予約ありがとうございました。

2019-07-15 | Posted in EXHIBITION & EVENTComments Closed 

 

六年目・六月の本屋考

6月は本屋を営む方々とトークイベントに出演する機会が重なりました。『ことばが生まれる景色』原画展のトークイベントではTitleの辻山良雄さん。5周年企画でお招きした古巣B&Bのオーナー内沼晋太郎さん。「プチ中四国本屋会議」では、高松の完全予約制の古本屋・なタ書の藤井佳之さんと、トーク会場にもなった横川の呑める古本屋・本と自由の青山修三さん。

辻山さんは自分が本屋を始めるきっかけとなった、リブロ広島店を形作った人。そのことを知ったのは、Titleオープンの少し前でした。幻冬舎ウェブマガジンの連載でも触れられていますが、時間と場所を超えて繋がっていくことが嬉しいです。連載に出てくる男性はうちにもよく来てくれるお客様で、トークイベントには奥様と一緒に参加されていて、感慨もひとしおでした。

5年前のオープン直後にもトークゲストとして来てくれた内沼さん。何かと暗い書店業界に軽やかなアイデアを提示し続けるお話はより深化していました。雑誌『ユリイカ』での論考(内沼さんのnoteに全文掲載される予定)には勇気をもらい、下北沢のまちづくりの話や精力的に取り組む出版事業の話に刺激をもらいました。

個性的な古書店を営む二人を交えた鼎談では、仕入れや売上など普段は聞けない突っ込んだ内容で盛り上がりました。古書と新刊という違いはあれど、予約制だからできる藤井さんの働き方には目から鱗で、新刊書店勤務を経て語られる青山さんの生き方に共感。二人の味わいに魅了される一夜、主催のあいだprojectさんにも感謝です。

それらのイベントを受けて最近考えた本屋考、まとめきれていないのですが、思うままに書き記してみました。

読書という行為は「視覚」、目という感覚器官を使うことであり、PCモニターやスマホと相性が良い。「視覚」を用いて知識や情報を提供する本は、紙に印刷されなくてもオンラインで何処へでも届けることができる。音楽を楽しむための「聴覚」も電子機器との相性は抜群。そもそもデジタルデータのCDが、音楽配信サービスの普及に圧されるのは道理とも言えてしまう。

しかし、0と1の二進法で構築されるコンピューターの世界。どんなに素晴らしい絵や音楽も、モニター画面上で見たもの、PCのスピーカーで聴いたものは、結局は0と1という記号の集合体であり、それを脳がそのように変換しているのではないか?そのような変換行為には無意識のうちに微細なストレスが生じているのではないか?というのは、先日のトークイベントでnakabanさんから聞いた仮説。非常に説得力のある話だと思う。原画を観る。ライブで演奏を聴く。「本物」に触れたときに感動は押し寄せる。

さらに話を進めると、PCやスマホがアクセスできない「味覚」「嗅覚」「触覚」を体感できるのは、リアルの強みだ。料理教室や読書会など「イベント」と言ってしまうと月並みだけど、本屋も五感にアクセスできる可能性を秘めている。

人との出会いもその一瞬一瞬、感覚をフル活用している。店そのものが「人」である個人店はチェーン店に比べて、店主とお客さん、お客さん同士といった関係性が生まれやすいところが魅力だと思う。もちろん「人」だからこそ相性の良し悪しはあって、苦手な店もあるけれど、そういうところも含めて面白い。お気に入りの喫茶店、仕事帰りに立ち寄るBAR、馴染みのレコード店、月に一度の床屋。そんな行きつけの場所の一つに本屋が含まれていると嬉しいし、それはとても豊かだ。

と、ここまで書いてみて、愛すべきキャラクターの店主がいつも店にいることこそ、実は一番の魅力だったりするのではと気がつきました。ゆるくてちょっとダメ(褒め言葉)でそこが格好良かったりする、二人の古書店の店主のことを思い浮かべると、どんなに本屋論を語っても結局かなわない気がします。ちょっとズルイなあ。

2019-07-04 | Posted in THANK YOUComments Closed